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掛取りと狐舞

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さて 「大晦日」ですね
上の絵は 北斎の「隅田川両岸一覧」の内 「吉原の終年」というものです
北斎は 生涯に90回以上 引越ししたと言われていますが
どれも 隅田川の両岸を 行ったり来たりしただけ
その住まいの近辺を描いたこの「両岸・・・」は 傑作の一つだと思いますよ
さて この当時は 吉原には「獅子舞」というものは入らず
代わりにこの「狐舞(きつねまい)」ということがあったのです
この風俗が書かれているものは少なくて 「絵本江戸風俗往来」くらいしか
読んだことありません
よく「吉原〇〇」というように 吉原独特の習俗を集めた本もたくさんありますが
この「狐舞」に関しては 触れていないですねー どうしてでしょう?
北斎の他には 酒井抱一が 絵にしているそうですよ
この狐舞は 白狐の面をかぶり 赤熊(しゃぐま)という 真っ赤な毛のかつらをつけ
錦の衣装をつけた たいへん立派なもので 
これが獅子の代わりに 笛太鼓のおはやしで舞い込んでくるのです
杵屋の長唄にもなっているそうですので ご存じの方もいるかと思います
吉原では この狐が 幣(ぬさ・右手に持っているもの)と 鈴を振って舞い
厄払いをつとめたそうです
しかし この狐に抱きつかれると「子供が出来る」という迷信があったため
新造(若い女郎)などは 狐舞が来ると逃げ回って大騒ぎだったそうです
この「狐舞」は 「絵本江戸・・・」によると 「世間の不粋は 見しものなし」
と 書いてありますので あー確かに 掛取りに追われる庶民や
堅気の商売のものに 大晦日 吉原へ行く暇なんかあるわけないんでした
掛取りと狐舞_f0122653_1044461.jpgさて ←これは国芳で「大晦日の鬼」
ぜーんぶ「掛取り」ですね
当時は 半期に一度の支払日ですから とにかくこの日のうちに貸し金を取り立てないと 来年の夏まで
また延びてしまいます
だから 借りてる方も貸してるほうも必死ですよ
そして夜が明けるまでが「前日」という考え方でしたから しつこい掛取りは 鶏が鳴くまで頑張ったといいます 徹夜の攻防ですね

 来たようだ うなりなさいと大晦日 (仮病)

 提灯を消す 掛取りのはかりごと 

さて 私も江戸人のように まだ駆け回らなければならないので
また後ほどお会いしましょう 本年度 最後のご挨拶を させていただきます

by tukitodoraneko | 2009-12-31 11:02 | 江戸のあれこれ

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